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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

活動小屋を出て、名も知らぬ場末の町を歩きながら、品川四郎が途方に暮れた体で、愛之助に話しかけた。

「それについて、僕は思当ることがあるのだが、君はこの秋の九段のお祭を見に行きやしまいね」

愛之助は念の為に確めて見た。

「イイヤ、僕はああ云うものには、大して興味がないのでね」

案の定、先日の九段の男は品川ではなかったのだ。そこで、愛之助は例のスリの一件を詳しく話して聞かせ、最後にこう附け加えた。

「どうしても君としか見えなかったものだから、実を云うと、僕は君を疑っていたのだよ。内々スリを働いているんじゃないかとね。ハハハハハ滑稽だね、それで遠慮をして、その後逢った時にも、態とそのことを話さなんだのさ」

「ヘエ、そんなことがあったのかい。すると愈々、もう一人の僕がいる訳だね」

品川は少々怖くなった様子である。

「双生児かも知れないぜ。君は知らなくても、君には赤ん坊の時分に分れた双生児があるのじゃないかい」

「イヤ、そんなことはあり得ないよ。僕の家庭はそんな秘密的なんじゃない。双生児があればとっくに分っている筈だ。それに双生児だって、あんなソックリのがあるだろうか」