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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

だから君達白蝙蝠の陰謀は何から何まで知っているのだ。青木芳江が大河原令嬢になりすまして、伯爵に麻酔剤を飲ませることも分っていたので、あの女の持っている麻酔剤を、無害の粉薬とすり替えて置いて、伯爵に御願いして、態と寝入った振りをして頂いたのだ。そして、伯爵の身体を押入れの箱の中の偽物と入れ替えると見せかけて、暗闇を幸、入れ替えをしなかったのだ。だからあの箱の中には今でも君達の仲間がとじこめられている訳だよ」

一座の人々は、名探偵のこの劇的出現に、アッと驚きの声を上げた。

赤松氏は、思わず横にいた偽の明智小五郎を見た。寸分違った所はない。明智小五郎と明智小五郎が相対して睨み合っているのだ。だが、誰よりもびっくりしたのは、偽の明智になりすました青木愛之助であった。彼が若し、真からの悪党であったなら、本物の明智に対して、貴様こそ偽物だと云い張ったであろうが、そうすれば、この全く瓜二つの両人の真偽判別は一寸不可能であったかも知れないのだが、読者も御承知の通り、青木という男はただ極端な猟奇者という丈けで、根はごく小心者だったから、そこまで我慢がし切れず、第一番にその部屋を逃げ出そうとしたのである。