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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

「来週の水曜日。差支はない?」

節穴の視野の外で、男も外套を着ながら答えた。

「じゃ、きっとね。時間は今夜位」

婦人はそう云って、もう縄梯子に足をかけたらしく、例の特殊の音が聞えて来た。

男女は降りてしまって、暫くすると、主婦の咳払いが幽かに聞えた。もう帰ったから降りて来ても大丈夫という知らせである。

青木、品川の両人は階下に降りると、主婦への挨拶もそこそこに、大急ぎで表へ出た。云うまでもなく、もう一人の品川四郎を尾行する為だ。

半町程向うの町角で、二人は今別れて、男は右へ女は左へと歩み去る所であった。気づかれぬ様尾行して行くと、男は近くの電車通りへ出た。だがもう二時を過ぎているので電車のあろう筈はない。時たま徹夜稼ぎの円タクが、広い通りを我物顔に、ピュウピュウと走って行くばかりだ。男はその一つを捉えて乗込んだ。

まさか尾行を感づいた訳ではあるまいが、この早業に、青木も品川もハッとして、隠れていた場所から電車道へ走り出した。と、うまい工合に、そこへ一台の空自動車だ。二人は早速それに乗込むと、

「前の車だ。あれを見失わぬ様に、どこまでも尾行してくれ給え」