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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页
と命じた。
「大丈夫ですよ。この夜更けに、まぎれる車がないから、めったに見失うことはありゃしませんや」
運転手は心得顔にスタートした。
砥の如き深夜の大道を、二筋の白い光が雁行して飛んだ。追駈けである。
青木と品川は、車中に及び腰になって、傍目もふらず前方を見つめていた。数間の向うを怪物の車が走る。その後部のガラス窓にそれらしい中折帽が揺れている。
「アッ、しまった。奴気づいたらしいよ」
品川が叫んだ。先の車の中折帽がヒョイとうしろを振向いたのだ。白い顔がボンヤリと見えた。と思うと、突然、前の自動車の速力が加わった。またたく間に五間十間両車の距離が遠ざかって行く。
「追駈けるんだ。速力は大丈夫か」
「大丈夫でさあ。あんなボロ車。こっちは新型の六気筒ですからね」
走る走る。天地が爆音ばかりになってしまった。
だが十分程も全速力で走ると、とても敵わぬと思ったのか、先の自動車がバッタリ停車した。
「ここはどこだね」
「赤坂山王下です。止めますか」
「止めてくれ給え、止めてくれ給え」
見ていると、男は車を降りて、賃銀を払うと、そこの横丁へ這入って行く。青木、品川は、云うまでもなく自動車を捨てて男のあとを追った。