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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页
というのは………」
と、愛之助は思い切って、先夜の鶴舞公園の一伍一什を物語った。
「で、君は奥さんを、今でも疑っているのか」
それを聞くと、品川ははにかみとも恐怖ともつかぬ変な表情で尋ねた。
「いや、もう殆ど疑っていない。多分別の女だったのだろう。だが、場所が丁度僕の近所だからね。何か意味ありそうにも思われるのだ」
品川はふとおし黙って、何か考えていたが。「若しかしたら」と独言を云いながら、突然立って部屋を出て行ったかと思うと、一通の封書を手にして帰って来た。
「ちょっとこれを読んでごらん」
愛之助は妙なことを云うと思いながら、何気なく封書を受取って、中の書簡箋を拡げて見た。そこには女文字で次の様に記してあった。
道ならぬこととは知りながら、それ故にこそ身も世もあらず嬉しくて、あの夜のこと、君のおん身振、君のおん言の葉、細々としたる末までも、一つ一つ、繰返し心に浮べては、その度毎に今更らのように顔あからめ、胸躍らせて居ります。お笑い下さいまし。わたくしあの様な愛を、あの夜というあの夜まで、嘗つて夢見たことすらなかったのでございますもの。小娘の様に、本当に本当に、わたくし夢中でございますのよ。