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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

03 下巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页

青空文庫

姉は廿二日に着くと、廿三日には朝早く起き、梅子だけを伴って買い物と挨拶廻りに出かけ、晩の御飯を何処かで呼ばれて帰って来たが、廿四日の当日には、姉、正雄、梅子、貞之助夫婦、悦子、雪子、妙子の八人にお春が供をして、八時半に家を出た。女たちは皆、姉が黒羽二重、幸子以下の三姉妹はそれぞれ少しずつ違う紫系統の一越縮緬、お春が古代紫の紬、と云う紋服姿であった。途中、阪急の夙川駅から、半ズボンの下に毛脛を見せた兄のキリレンコが乗って来て、車室の中の色彩にはっと眼を見張ったが、貞之助達の前へ来て吊り革にぶら下りながら、

「どちらへ」

と、小腰を屈めた。

「―――皆さん今日はお揃いですね」

「今日は僕の家内のお母さんの亡くなった日で、皆でお寺詣りに行きます」

「おお、いつお母さん亡くなりました?」

「二十三年も前のことですねん」

と、妙子が云った。

「キリレンコさん、カタリナさんからお便りがありますか」

と、幸子が聞いた。

「そうそう、私忘れていました。この間の手紙にあなた方に宜しくと書いてありました。カタリナ今英吉利です」

「もう伯林ではないのんですの」

「伯林にはちょっといただけ。直き英吉利に行きました。