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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
03 下巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 226,715 字 · 431 页
知っていたこと、などを今から考えると、父はやっぱり京美人型が好きだったのではないであろうか、と思えるのであった。又、そう云えば、自分が同じ妹のうちでも妙子よりは雪子の方をより深く愛しているのは、他にもいろいろな理由があるけれども、この妹が四人の姉妹たちのうちで誰よりも母の面影を伝えているせいかも知れなかった。四人のうちで幸子と妙子とが父親似であり、鶴子と雪子とが母親似であることは前に書いたが、鶴子の方は背が高く、全体が大柄に出来ているので、顔の感じは京女であるけれども、母が持っていたような繊弱さ、たおやかさに欠けている。母は明治の女であるから、背も五尺に満たないくらいであったし、手や足なども可愛く、かぼそくて、指の形の華奢で優雅だったことは、精巧な細工物のようであった。だから姉妹じゅうで一番背の低い妙子よりもまだ母の方が低かった訳で、妙子より五六分ばかり高い雪子は、母に比べれば大作りであることを免れないが、そう云っても彼女が誰よりも、母の性質と姿の中にあったよいものを伝えているに違いなく、母の身の周りに揺曳していた薫りのようなものが、仄かながら彼女にも感じられるのであった。