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とおのものがたり

遠野物語

柳田 国男

「遠野物語」柳田國男、1910(明治43)年6月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,063 字 · 79 页

青空文庫

四〇

四一

四二

この皮ほしけれども御犬は必ずどこかこの近所に隠れて見ておるに相違なければ、取ることができぬといえり。

四〇 草の長さ三寸あれば狼は身を隠すといえり。草木の色の移り行くにつれて、狼の毛の色も季節ごとに変りて行くものなり。

四一 和野の佐々木嘉兵衛、或る年境木越の大谷地へ狩にゆきたり。死助の方より走れる原なり。秋の暮のことにて木の葉は散り尽し山もあらわなり。向うの峯より何百とも知れぬ狼此方へ群れて走りくるを見て恐ろしさに堪えず、樹の梢に上りてありしに、その樹の下を夥しき足音して走り過ぎ北の方へ行けり。そのころより遠野郷には狼甚だ少なくなれりとのことなり。

四二 六角牛山の麓にオバヤ、板小屋などいうところあり。広き萱山なり。村々より苅りに行く。ある年の秋飯豊村の者ども萱を苅るとて、岩穴の中より狼の子三匹を見出し、その二つを殺し一つを持ち帰りしに、その日より狼の飯豊衆の馬を襲うことやまず。外の村々の人馬にはいささかも害をなさず。飯豊衆相談して狼狩をなす。その中には相撲を取り平生力自慢の者あり。さて野に出でて見るに、雄の狼は遠くにおりて来たらず。雌狼一つ鉄という男に飛びかかりたるを、ワッポロを脱ぎて腕に巻き、やにわにその狼の口の中に突き込みしに、狼これを噛む。