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とおのものがたり
遠野物語
柳田 国男
「遠野物語」柳田國男、1910(明治43)年6月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,063 字 · 79 页
一四
駄賃の徒はこの翁を父親のように思いて、親しみたり。少しく収入の余あれば、町に下りきて酒を飲む。赤毛布にて作りたる半纏を着て、赤き頭巾を被り、酔えば、町の中を躍りて帰るに巡査もとがめず。いよいよ老衰して後、旧里に帰りあわれなる暮しをなせり。子供はすべて北海道へ行き、翁ただ一人なり。
一四 部落には必ず一戸の旧家ありて、オクナイサマという神を祀る。その家をば大同という。この神の像は桑の木を削りて顔を描き、四角なる布の真中に穴を明け、これを上より通して衣裳とす。正月の十五日には小字中の人々この家に集まり来たりてこれを祭る。またオシラサマという神あり。この神の像もまた同じようにして造り設け、これも正月の十五日に里人集まりてこれを祭る。その式には白粉を神像の顔に塗ることあり。大同の家には必ず畳一帖の室あり。この部屋にて夜寝る者はいつも不思議に遭う。枕を反すなどは常のことなり。或いは誰かに抱き起こされ、または室より突き出さるることもあり。およそ静かに眠ることを許さぬなり。
○オシラサマは双神なり。アイヌの中にもこの神あること『蝦夷風俗彙聞』に見ゆ。
○羽後苅和野の町にて市の神の神体なる陰陽の神に正月十五日白粉を塗りて祭ることあり。