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とおのものがたり

遠野物語

柳田 国男

「遠野物語」柳田國男、1910(明治43)年6月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,063 字 · 79 页

青空文庫

三〇

三一

三二

山口のハネトという家の主人、佐々木氏の祖父と竹馬の友なり。きわめて無法者にて、鉞にて草を苅り鎌にて土を掘るなど、若き時は乱暴の振舞のみ多かりし人なり。或る時人と賭をして一人にて前薬師に登りたり。帰りての物語に曰く、頂上に大なる岩あり、その岩の上に大男三人いたり。前にあまたの金銀をひろげたり。この男の近よるを見て、気色ばみて振り返る、その眼の光きわめて恐ろし。早池峯に登りたるが途に迷いて来たるなりと言えば、然らば送りて遣るべしとて先に立ち、麓近きところまで来たり、眼を塞げと言うままに、暫時そこに立ちている間に、たちまち異人は見えずなりたりという。

三〇 小国村の何某という男、或る日早池峯に竹を伐りに行きしに、地竹のおびただしく茂りたる中に、大なる男一人寝ていたるを見たり。地竹にて編みたる三尺ばかりの草履を脱ぎてあり。仰に臥して大なる鼾をかきてありき。

○下閉伊郡小国村大字小国。

○地竹は深山に生ずる低き竹なり。

三一 遠野郷の民家の子女にして、異人にさらわれて行く者年々多くあり。ことに女に多しとなり。

三二 千晩ヶ岳は山中に沼あり。この谷は物すごく腥き臭のするところにて、この山に入り帰りたる者はまことに少なし。