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とおのものがたり

遠野物語

柳田 国男

「遠野物語」柳田國男、1910(明治43)年6月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,063 字 · 79 页

青空文庫

おれはヤマハハにぼっかけられてあるなり、隠してくれよと頼み、苅り置きたる柴の中に隠れたり。ヤマハハ尋ね来たりて、どこに隠れたかと柴の束をのけんとして柴を抱えたるまま山より滑り落ちたり。その隙にここを遁れてまた萱を苅る翁に逢う。おれはヤマハハにぼっかけられてあるなり、隠してくれよと頼み、苅り置きたる萱の中に隠れたり。ヤマハハはまた尋ね来たりて、どこに隠れたかと萱の束をのけんとして、萱を抱えたるまま山より滑り落ちたり。その隙にまたここを遁れ出でて大きなる沼の岸に出でたり。これよりは行くべき方もなければ、沼の岸の大木の梢に昇りいたり。ヤマハハはどけえ行ったとて遁がすものかとて、沼の水に娘の影の映れるを見てすぐに沼の中に飛び入りたり。この間に再び此所を走り出で、一つの笹小屋のあるを見つけ、中に入りて見れば若き女いたり。此にも同じことを告げて石の唐櫃のありし中へ隠してもらいたるところへ、ヤマハハまた飛び来たり娘のありかを問えども隠して知らずと答えたれば、いんね来ぬはずはない、人くさい香がするものという。それは今雀を炙って食った故なるべしと言えば、ヤマハハも納得してそんなら少し寝ん、石のからうどの中にしようか、木のからうどの中がよいか、石はつめたし木のからうどの中にと言いて、木の唐櫃の中に入りて寝たり。