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しんさいこうき
震災後記
喜田 貞吉
「社会史研究 第一〇巻第四号」1923(大正12)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,544 字 · 41 页
★三等の客は三等室へ、大小便は便所へ
。
これにはさすがのハイカラ紳士も、自分の家が潰れた以上に閉口したと見えて、本当に口を閉じてしまった。
いったん吐き出した気焔は対手の沈黙によってもなかなか止まぬ。
「家が何だ! 家財が何だ! 大切なのは人間だ。俺達はその人間までも焼いておるのだ。家財が惜しさに助かるべき生命を失った奴らは大馬鹿だ。俺はいったん持ち出した物も皆捨ててしまって助かったのだ。それに何だ! 大切そうに荷物を座席の上に置いて、大切な人間を立たして置いて、ひとりでノサバッている奴らがこんな込み合いの汽車の中にもいるじゃないか」。
鋭鋒が違った方面に向って行った。睨まれた人はソット荷物を膝の上に置いた。この人の言うことは正しい。しかしこの人は、焼けたり潰れたりした家は皆他人の物だと予定しているらしくも思われた。
★三等の客は三等室へ、大小便は便所へ
これも同じ時のことだ。馬入川で乗りかえた車室はその以前のに比べるとややゆっくりしていたが、それでも通路には往来出来ぬほどに人が立っている。
車窓から車掌が大声で、「三等の御客は三等室へお乗り下さい」と警告して歩行く。震災後三十八日目の今日、なおこの警告が必要なのだ。