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しんさいこうき
震災後記
喜田 貞吉
「社会史研究 第一〇巻第四号」1923(大正12)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,544 字 · 41 页
十月十八日
今夜はいやでもここに一夜を明かさねばならぬ。満員の乗客は小さい田舎駅の待合室に漏れて、プラットホームや軒下にこの夜寒を露宿なのだ。自分は乗り合いの二人とやっと駅前の松屋とかいう旅宿を叩き起して泊めて貰った。三人で八畳間に合宿だ。隣室に旅芸人らしい夫婦者が泊っていて、いつまでもグタグタ話をしてなかなか寝つかれぬ。
十月十八日(木)
夜が明けてみると、さすがに山国の朝の気持はよい。まず顔を洗おうとすると、洗面所に水がない。おかみさんは平気なもので、そこにバケツがあるから井戸端へ行って洗ってくださいだ。これも震災のため余興の一つと、恭しく命に従うて用をたす。朝の一番で名古屋へ行き、夜の十時に京都に着いた。東京京都間、要するところ三十時間。
そういつまでも震災気分になってはおれぬ。十一月十八日、二度目に東京へ帰ってみると、不在中に出来ているはずの修繕がいっこう捗っておらず、相変らず避難場そのままの有様だが、それもこのさい我慢せねばならぬ。ともかく東海道線もこのほど全通して、御殿場以東の徐行に時間はかかるが便利になった。平塚在の松林中の露天学校はまだ続いていたが、それも久しいことではなかろう。