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しんさいこうき
震災後記
喜田 貞吉
「社会史研究 第一〇巻第四号」1923(大正12)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,544 字 · 41 页
★山一つで感情の相違
バラック建ながら東京の表通りはたいてい家が建ち並んだ。復興の曙光も見えたというものだ。震災に関する自分の記録もこれまでだ。後の記念にもと見聞感想の日誌に漏れたところを少々書きとめて、この「後記」を終ることにする。
★山一つで感情の相違
碓氷峠は本州中部と関東との間にあって、ここの山一つで古来風俗・民情その他に著しい異同のあることは、今さら取り立てていうまでもないことだが、今度の震災についてもその感じのうえに相違が著しく現われているようだ。群馬県も地震の被害はひどくなかったが、しかも震災気分は著しく濃厚で、例の鮮人虐殺事件のごとき不祥事も少からず演ぜられた。しかるに足一とび長野県に入れば、よほど気分がゆったりしているようだ。これは九月二十日西下のさいにも何がなしに感じたことであったが、十月再度の西下のさいに篠の井駅で長野の新聞を買ってみると、このほど知事さんが某所で松茸狩を催された時に、そこの郡長殿大いに忠勤を抽んでて、見付かりさうな所に松茸を沢山植え付けておいたところが、ついそのカラクリが暴露したという愛嬌談を、さも事面白く書いてあった。こんなことはまだ関東では見られぬ気分だ。