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しんさいこうき

震災後記

喜田 貞吉

「社会史研究 第一〇巻第四号」1923(大正12)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,544 字 · 41 页

青空文庫

九月十三日

の店を出したが、一向売れなかったようだ。旦那さんはズボンにシャツ一枚、奥さんは肌繻袢に湯もじばかり。だいたいお化粧したり盛装したりした婦人などは一日以来一人も見かけたことがない。年ごろの娘でもお尻ばしょりに足袋跣足という方が幅がきく。

九月十三日(木)

京都の宅から助手の山本〔(桝蔵)〕生が、震災跡始末の応援にとはるばる来てくれた。警察や府庁がなかなか証明をしてくれず、それを貰うにはなはだしく苦心されたものだという。やっと七日分の食糧携帯という条件で許されて昨日中央線で出かけたのだが、途中の困難も一と通りではなかったらしい。差当りの入用にと三百円だけ工面して来てくれた。実は昨日あたりからボツボツ銀行も開店しかけてはいるが、一日百円を限って払い出されるので、それも込みあって容易に受け取れなかったのだ。これで大いに心丈夫になる。ことに震災以来京都の宅へ到着した三十通ばかりの書信を持参してくれたので、久しくどちらからも音信を受けなかった自分には言い知れぬ嬉しさを感じた。地方では東京行の書信一切郵便局で扱わぬので、念のために重ねて京都の宅へ出したなど書いた親切なのが数通あった。