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しんさいこうき

震災後記

喜田 貞吉

「社会史研究 第一〇巻第四号」1923(大正12)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,544 字 · 41 页

青空文庫

九月八日

九月九日

九月十日

郵便も来ねば地方の新聞も来ぬ。見るもの聞くもの、気の毒なこと、気味の悪いこと、恐ろしいことばかりで、風声鶴唳とでもいおうか、真を置きがたい巷説がまだやまぬ。

九月八日(土)

今日は植木屋が五人来てくれて、昨日の続きをやる。室内の掃除もだいたい済んで、始めて畳の上で坐ることが出来た。始めて家に落ちついた気がする。実は一日以来そわそわのみしていて、舞い込んだ土煙りの掃除も出来ず、汚された座敷の上は草履ばきで歩行いていたのだ。

富士紡在勤の久堅町の甥が、職工らに供給する食糧やら、差当りて必需品の買い出しにと軍艦に便乗して大阪へ行く。

九月九日(日)

今日も植木屋が五人。延べ都合十四人がかりでやっと家の外まわりの片つけだけが出来た。土塊や廃瓦は幾分邸内の低地の地上げに用いたが、それでもなかなか納まり切れず、空地の一隅にうずたかく積み上げて、震災記念の小山が出来た。山形県庄内の阿部正己君が、わざわざ震災見舞に東京へ来られたとて立ち寄られた(市内の方々の御来訪は一々ここに書き留めぬ)。

九月十日(月)

一日の激震の際小田原御用邸で薨去になった閑院宮寛子女王殿下の御仮葬(?)が、宅の前の豊島岡御墓地で行われた。