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せいねん
青年
「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页
まさか江戸時代の柳橋芸者の遺風を慕うのでもあるまいが、昨今松さんという絆纏着の兄いさんに熱くなって、お辰姉えさんの大目玉を喰い、しょげ返っているとはお気の毒」
読んでしまって純一は覚えず微笑んだ。縦い性欲の為めにもせよ、利を図ることを忘れることの出来る女であったと云うのが、殆ど嘉言善行を見聞きしたような慰めを、自分に与えてくれるのである。それは人形喰いという詞が、頗る純一の自ら喜ぶ心を満足せしめるのである。若い心は弾力に富んでいる。どんな不愉快な事があって、自己を抑圧していても、聊かの弛みが生ずるや否や、弾力は待ち構えていたようにそれを機として、無意識に元に帰そうとする。純一はおちゃらの記事を見て、少し気分を恢復した。
丁度そこへ女中が来て、福住から来た使の口上を取り次いだ。お暇ならお遊びにいらっしゃいと、坂井さんが仰ゃったと云うのである。純一は躊躇せずに、只今伺いますと云えと答えた。想うに純一は到底この招きに応ぜずにしまうことは出来なかったであろう。なぜと云うに、縦しや強ねてことわって見たい情はあるとしても、卑怯らしく退嬰の態度を見せることが、残念になるに極まっているからである。