轻松读懂日语经典作品
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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
彼はただ妙子のことを思っていた。彼女の罌粟の花の様な笑顔や、歌の様に甘い声を、汽車の動揺につれて目と耳に繰返した。彼は又、彼女が最後の日に舟の上で話しかけた、夢の様な恐怖を思出した。「やっぱり彼女の予感が当ったのかも知れない」と思うと、まだ片鱗をさえ聞かぬ、事件そのものにも、不可思議な興味を覚えた。
七時三十分列車は上野駅に到着した。
改札口を出ると、そこに自動車の運転手が待ち受けていた。明智の顔は新聞で御馴染になっているので、間違いはない。
「福田から御迎えでございます」
運転手は現代の英雄に対する大衆的尊敬を以て、うやうやしく云った。
「アア、御苦労さま。車はどれだね」
明智は気軽に応じた。
「こちらでございます」
運転手は先に立って自動車置場へ案内した。
この場合明智の方に手抜りがあったとは云えぬ。彼が今上野駅へ到着する事は、波越警部と、福田氏とが知っているばかりだ。この自動車が偽物だなどとは、神様だって想像も出来なかったであろう。それに車も実業家の持物らしく立派だし、運転手助手の服装も整っていた。強いて云うならば、彼等両人が揃いも揃って大きなロイド眼鏡をかけていたこと、自動車に福田家の定紋が見当らなんだこと、この二点を疑えば疑うのだが、運転手に塵よけのロイド眼鏡はあり勝ちのことだし、定紋の方は明智はまるで