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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
魔術師の激怒
明智がおとなしい口調で答えた。だが彼の右手には、ピカピカ光るピストルの筒口が、三次の胸板を狙っている。
魔術師の激怒
さてそれからどんなことがあったか、暫くして、賊の本船に文代と三次とが帰りついたところを見ると、我が明智小五郎は、残念ながら三次の為に敗を取ったものと見える。それとも、態と一先ずこの二人を本船に帰して、おもむろに怪賊逮捕の策略をめぐらしているのかも知れない。
お話変って、妙子さんをさらって、本船に戻った魔術師の奥村源造は、すばらしく上機嫌であった。彼は警官隊が玉村父子救助に駈けつける以前、已に例の旗本屋敷を立去っていたので、あの様な騒ぎがあったことを少しも知らなかった。善太郎氏も、一郎も、二郎も、穴蔵の濁水におぼれてしまったものと信じ切っていた。
あの厳重な穴蔵、妙子をつれ出した抜け穴は、誰も気づく筈はないし、仮令気づいた所で、これも外から厳重に締りをして置いたから、破れるものではない。親子三人は、天変地異でも起らぬ限り、死の運命はまぬがれぬ。その上若し救助者が飛込んで来ても、穴蔵の降り口には、例のピストルの案山子がしつらえてある。