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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
異様な捕物
波越警部は、明智の云う意味がボンヤリと分って来る様な気がした。
「では、若しやあなたは、……」
彼はハッとした様に顔色を変えて、明智の目の中を覗き込んだ。ボンヤリと分って来た意味が余りにも意外な、恐ろしい事柄であったからだ。
異様な捕物
さて、怨霊のたたりは、それで終ったのではない。善太郎氏の次には三人の兄妹がある。彼等は父の死を悲しんでいる暇もなく、早くも矢つぎ早に襲いかかる怨霊の魔力に悩まされなければならなかった。
一郎と二郎とは、西洋風に毎朝ベッドの中で、コーヒーを飲む癖があった。その朝も(善太郎氏の葬儀をすませて数日後のことだ)小女の持って来たコーヒーを飲んだが、間もなく、烈しい腹痛を覚え、吐き下しを始めた。
二人とも、その朝のコーヒーが余り苦かったので、半分程しか飲まなかったが、若しすっかり飲んでいたら、一命にも関するところであった。分析の結果、コーヒーの中に、ある毒物が混入してあったことが分ったのだ。召使一同厳重に取調べられたが、一人も疑わしい者はなかった、皆永年玉村家の恩顧を受けたものばかりであった。
今度は毒蛇ではない。あのいまわしい生物は、已に死んでしまった。