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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
緋色のカーテン
警部は明智の指定した道順を復誦して見せた。「だが、どうして君はその犯人を探し出したのです。そいつは一体何者です」
「非常に意外な人物です。無論あなたもご存じの者です」
「誰です、誰です」
警部は思わずせき込んで尋ねる。
「……」
明智が、波越氏の耳に口を寄せて、何事かボソボソと囁いた。
「そ、そんな馬鹿なことが!」
警部は飛上らんばかりに驚いて叫んだ。
「あり得ないことです。いくらなんでも……何か確証があったのですか。それについて」
「詳しく云わなければ分りませんが、無論証拠もあるのです」
それから、明智は三十分程もかかって、その真犯人を発見するに至った顛末を、詳しく物語った。それを聞いてしまうと、波越氏もやっと明智の意見に承服した。そして、十時には必ず指定の場所へ行くことを約して、辞し去った。
緋色のカーテン
夜に入って、明智のアパートに第二の訪問者があった。玉村妙子さんだ。午前、彼女から電話で予告があったので、明智の方でも心待ちにしていたのだ。楽しからぬ待人ではあったが。
併し、妙子さんは美しかった。文代びいきの明智の目にも、顔形の美しさでは、妙子さんの方が数段まさって見えることを否定出来なかった。