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まじゅつし

魔術師

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页

青空文庫

巨人の手型

た。

巨人の手型

さて、波越警部の現場調査、それから暫くして来着した裁判所の一行の検視手続などを細叙していては、非常に退屈だから凡て省略して、ただ読者に告げて置かねばならぬ点丈けを、列記すると、

第一には、被害者福田氏の隠し戸棚から、高価なダイヤモンドが紛失していたことが、玉村氏の注意で判明した。

それは玉村商店の番頭が欧洲の宝石市場で手に入れた、古風なロゼット切りの十数カラットのもので、福田氏はその由緒ありげな光輝に惚れて、兄の玉村氏から原価で譲り受けた品であった。原価といっても、無論万を以て算える価格である。其貴重な宝石が福田氏の奇怪な死と共に、消失せてしまったのである。

第二は、福田氏の寝室の模様壁紙の上に、犯人の大きな血の手型が残されていたこと。流石老練警部の波越氏、巡査や玉村二郎が見逃していた大切な手掛りを苦もなく発見した。

「どうして、僕等はそれに気がつかなかったのでしょう」

と二郎青年が不審がると波越氏は大様に笑って答えた。

「この手型が余りに高く、普通でない場所にあったからです。人間が壁によりかかる時は、目よりも低い箇所に手を突くのが普通です。