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まじゅつし

魔術師

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页

青空文庫

すると、ガラガラと煉瓦がくずれ、そのうしろに、深い洞穴が現われた。煉瓦は、予めその部分丈け取りはずして、いつでもくずれる様、ソッと積み上げてあったのだ。

洞穴の中には、ボロボロに破れた着物を着た骸骨が、くずれもせず、断末魔の苦悶の姿をそのまま、乾しかたまっていた。

骨ばかりで、どうして原形を保っていることが出来たか。土の上に寄りかかっていたからか。或は復讐鬼の奥村源造が、骨をつぎ合わせて、そんな形をしつらえたのか。いずれにもせよ、着物を着た骸骨の、生けるが如き断末魔の形相は、ゾッとする程恐ろしいものであった。

土の中へ食い込んだ両手の指、異様な恰好に折れ曲った両足、よじれた胴体、食いしばった、むき出しの歯並、恐ろしい洞穴みたいな両眼。それが気違いの様に取乱して、断末魔の踊りを踊っているのだ。

流石の兄弟も、父親同様、「ワッ」と云って、顔をそむけないではいられなかった。女の妙子は、もう見ぬ先から慄え上って、床に顔を伏せたまま身を縮めていた。

自分達は少しも知らぬ事とは云え、これが父なり祖父なりに生埋めにされた男かと思うと、善太郎氏も一郎も二郎も、何とも云えぬ変な気持になった。