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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
今の世に、十九世紀の昔語りにでもあり相な、貰い子殺しの部落が現存するかと思うと、真実の弟を叩き殺して、つい門前の土中に埋め、その御手伝いをさせたもう一人の弟を狂人に仕立てて、気違い病院に放り込むなど、まるで涙香小史飜案する所の、フランス探偵小説みた様な、奇怪千万な犯罪すら行われているのだ。
だが、それらは世に顕われたる犯罪である。ある犯罪学者が云った様に、露顕する犯罪は十中二三に過ぎないものとしたならば、我々が日々の新聞で見ているよりも、一倍物凄く戦慄すべき大犯罪が、どれ程多く、つい知らぬ間に行われているか、恐らく想像の外であろう。例えば、あなたは、そうして小説を読みながら、すぐ壁一重のお隣で、今現にどんな事が行われているか、とゾッとして耳をすまして見る様なことはありませんか。本当に恐ろしいことだけれど、そんな邪推でさえも、この東京では決して無理とは云えないのです。
で、素人探偵の明智小五郎が、「蜘蛛男」事件を解決して、骨休めの休養をする間が、たった十日ばかりしかなかったというのも、小説家の作り話ではない。つまり、蜘蛛男が、例のパノラマ地獄で無残の死をとげてから、やっと十日たつかたたぬ内に、この「魔術師」