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まじゅつし

魔術師

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页

青空文庫

あいつをここへ引っぱって来い」

彼等は首領の命令に、アタフタと部屋を出て行ったが、暫くすると、妙な顔をして戻って来た。

「かしら、三次はどこへ行ってしまったのか、姿が見えません。機関室にも、荷庫にも、どこにもいません」

「ナニ、いない。そんなことがあるものか。ボートはあるのか」

「エエ、ボートは艫にもやってあります」

「まさかあいつが身投げをした訳ではあるまい。よし、貴様達がかばい立てするなら、俺が探しに行く。若しもあいつがいたなら、承知しないぞ」

源造は、娘が気絶したことで、一層腹を立てていた。その入れ合わせに、三次も同じ目に合わせてやらねば、承知出来ぬと思った。

彼はよろめく足を踏みしめて、船の中をあちこちと歩き廻った。部下の者共も、それを傍観している訳にも行かず、懐中電燈を振り照らしながら、彼のあとについて来た。

なる程三次はどこを探してもいなかった。

「畜生奴、悪いと知って、どこかへ隠れてしまったのだな。だが、いつまで隠れていられるものか。朝になったら、うぬ、どうするか」

源造は拳を振り振り、元の船室へ帰って来たが、一歩そこへ足を入れたかと思うと、「アッ」