轻松读懂日语经典作品
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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
光といっては、薄暗い石油ランプ、しかも相手の顔はその影にあるので、ハッキリは見えぬ。源造は、いきなり三次の鳥打帽を引ったくって、彼の顔をむき出しにした。
「アッ、キ、貴様、一体誰だッ」
源造の口から、思わず頓狂な叫声がほとばしる。その男は三次ではなかった。服装は三次のものだが、中味が違っていたのだ。
「ハハハハハハハ、お見忘れですか」
男はニヤニヤ笑っている。
「誰だッ、名前を云え」
源造は、酒の酔いもさめはて、真青になってヨロヨロとよろめいた。
「よくごらんなさい。僕ですよ」
見ていると、黒く汚れた下から、本当の顔が、段々浮上って来る。アア、このモジャモジャの髪の毛、この広い額、この鋭い眼光、外にはない。彼奴だ、彼奴だ。
「明智小五郎……」
源造はうめく様に呟いた。
「とうとう、僕の念願が届きましたね」明智はやっぱり笑いながら、「今度こそはもうのがしませんよ」
彼は云いながら、素早く身をひるがえして、入口のドアを締め、その前に立ちはだかった。部下の者に邪魔されぬ用意だ。彼等はまだ三次を探して船内をうろついているのであろう。一人も姿を見せなかった。
正義の巨人と、邪悪の怪人とは、ここに三たび相会した。