轻松读懂日语经典作品
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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
「エエ、たった今、そのドアをくぐって、出て行ったばかりなのよ。あなた方の目につかなかった筈がありませんわ」
「お前が、叫び声を立ててからか」
「エエ、そうよ」
「それじゃ逃げ出す暇はない。わしらは、廊下の両側からかけつけたのだから、誰かが見なければならない筈だ。一郎、二郎、お前達そんなものを見はしなかっただろうね」
「馬鹿なことがあるものですか」一郎が例によって、怪談を否定した。「僕等は勿論誰にも会やしないし、第一、そんなべら棒な大男が、家の中に這入って来る道理がないじゃありませんか。妙子は夢を見たのですよ。どうせ、胸に手でものせていたんだろう」
「イイエ、お兄さま、夢じゃないのよ。なんぼあたしでも、夢なんかでこんなに騒ぎやしませんわ」
「マアいい。それで、角力取りみたいな奴が、どうしたんだね。……君のシーツの上にとぐろでも巻いていたのかね」
一郎はからかい顔だ。
「マア!」妙子は憎らしげに兄を睨んで置いて、父親の方へ向き直った。「お父さま、とぐろを巻いていたのは、小さな、小豆色の蛇ですのよ。ホラ、ここに、まだシーツの上が窪んでやしないこと」
「エ、小豆色の蛇だって」