轻松读懂日语经典作品
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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
仮令生きていたところで、蛇が毒薬を混ぜる筈もないのだ。やっぱり人だ。だが、復讐鬼一味のものは、今は一人も残っていないことが明らかになっているではないか。とすると……とすると……いくら考えても、全く不可解と云う外はない。
困じ果てた波越警部は、今日も又、彼の唯一の智恵袋明智小五郎を訪ねて、残念ながらその教えを乞う外はなかった。
開化アパートの書斎へ警部が入って行った時、明智は、机の上に大型の書物を開いて、読み入っている様に見えた。グロースの犯罪心理学だ。
「読書ですか」
波越氏が、独逸語の頁を覗き込みながら、云った。
「イヤ、本を開いて、考えごとをしていたのです。読んでいた訳ではありません」
明智が、ボンヤリした顔を上げて、答えた。
「何を考えていたのです。奥村源造の怨霊についてですか」
「イイエ、もっと人間らしいことです。美しい幻です。僕だって、犯罪以外のことを考えない訳ではありません」
「ホウ、美しい幻? 景色ですか。絵ですか。それとも歌ですか」
警部も柄にない云い方をする。
「もっと美しいものです。人の心です。純情です」
「純情? といいますと」
「奥村文代を、早く出獄させてやる訳には行かぬでしょうか」