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まじゅつし

魔術師

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页

青空文庫

これが解き難い謎として我々を苦しめたのです。ところが、こんな小さな子供が共犯者であったとすると、あの謎もなんなく解くことが出来るのです。扉の上部の換気用の回転窓。あれです。あんな狭い所から人間が出入りしようとは、誰も考えても見ません。どんな小柄の大人にだって、これは全く不可能だからです。ところが進一少年の様な幼児となると、問題は別です。骨の細い幼児なら、あすこをくぐって、部屋へ出入りすることが出来るのです。アア何という巧みな思いつきでしょう。如何に疑い深い警察官でも、まさかこんな、九歳や十歳の幼児が共犯者だとは気がつきませんからね。……

妙子さんは進一少年をつれて被害者の部屋に這入り――這入るのは家族のことですから、訳はありません――殺害の目的を果し、例の笛を吹き花を撒いて死者を葬ると、ドアの鍵を進一少年に渡して、妙子さんは先に部屋を出、少年は中から戸締りをして置いて、猿の様に回転窓に昇りつき、そこから、外の廊下へおりて逃げ去る、という順序です。

例の巨人は、妙子さんが進一少年を肩の上にのせ、その上からマントをはおって、逃げ出して見せ、殺人事件に奇怪な怪談味をそえ、警察をまどわせる手段としたのです。