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まじゅつし

魔術師

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页

青空文庫

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かくして、怪賊魔術師は亡びた。妙子は直ちに刑務所に収容され、それと入れ代る様にして、可憐の文代さんが自由の身となった。彼女が賊の娘ではなくして玉村宝石王の実子、一郎二郎の実の妹であることを聞かされた時、どの様な歓喜を味ったか、それは読者の想像に任せて置けばよい。

玉村家は一郎が相続して、宝石店の経営に当り、二郎はその熱心なる共働者であった。父を失った兄弟は、文代さんという、美しく優しい妹を得て、世にも睦まじい三人兄妹が出来上った。

文代さんは、最早や賊の娘ではなかった。父にそむいた裏切りものでもなかった。彼女は今や何の遠慮も気兼もなく彼女の恋を楽しみ得る身の上であった。

「文代さん、事務所へ出勤かい」

二郎兄さんにそんな風にからかわれる日が来た。

妙子は明智小五郎の女助手を志願して、彼の事務所の開化アパートへ、毎日の様に通い始めたのだ。

怪賊魔術師の娘であった丈けに、彼女は探偵助手には持って来いだ。その後文代探偵が、明智を助けて、どの様なすばらしい手腕を見せたか。そして、遂に彼女が明智夫人と呼ばれる様になるまでのいきさつはどうであったか。