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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

このアビルの親切に対して、一時ちょっと眉唾の感じを持ったが、しかし、また昨夜みたいに、ひっかけられるんじゃないかといった深い疑惑は抱かなかった。抱けなかった。それでよかったのだし、それでいいのだと俺はうなだれていた。

「あのとき、ラジオではいったリュウコが、あんなにながくなったのも、俺がもとあばれてた時分の前歴がばれたからなんだ」

「あんたは俺の前歴だけじゃなくて、現在の俺のことも知ってるみたいだが」

「現在のあんたは、おそらく、情熱のやり場がなくて、犬を殺したり、猫を殺したり……」

「ヒコベエは――殺さない。いや、殺したかな。いーや、殺しちゃいないんだが、殺したみたいな気もする。犬はたしかにぶっ殺した」

「そのゴチャマイ(犬の撲殺)のあげくに、人殺しの仲間入り……? それはやめてほしいな」

「あんたはニヒリストのはずなのに……」

「いや、なりきれなくて、こんなことをして、自分をだましている。ごまかしている。中途半端な韜晦だ」

「中途半端?」

俺のあの精神のめまいも、死へのよろめきではなく、生へのあがきだったのだ。中途半端なあがき――と俺がアビルの言葉からそう感じたとき、