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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

まだグラスに飲み残しがあるのに、つぎたして、

「文士だとばかり思ったら、そうじゃなくて、悪い人だったけど――死なれて見ると、やっぱり可哀そうな人だったと思うわ」

「死んだ……?」

俺も吉原の女郎屋では文士で通していた。

「ひと山当てよう当てようとあがいて……見てて気の毒で、あたしも身を売って貢いだりしたけど――結局、殺されちゃった」

「それはまさか、朝倉と言うんじゃあるまいね」

「四郎さんも深入りしてるのね」

俺の質問を黙殺して、照子は俺のポケットに眼をそそいで、

「それじゃ目立つわ。すぐ分るわ」

と言った。百成から借りたピストルを俺は上衣のポケットに入れていたが、大型なのでポケットがぼてっと外にふくらんでいた。

「チョッキをぬいで、あたしに貸してごらんなさい」

ピストルをうまく隠せるようにしてあげると言う。そのチョッキには丸万のくれたもうひとつの小型のピストルがはいっていた。俺は照子が小切れを探しに立った間に、チョッキのピストルを、ぬいだ上衣に移し、そしてそのチョッキをぬいで、ぽいとテーブルに投げると、照子が、

「ピストルの大きさに合わせて、これを切ってちょうだい」