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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
縫いつけを終って、
「はい」
とチョッキをくれた。
「や、ありがとう」
「ほんとは防弾チョッキのほうがいいわ。内側にピストルかけがついてるの、買うといいのよ」
防弾チョッキを中国語では保険的背心と書くということも照子は教えてくれた。
「背心?」
と俺はつぶやいて、
「今度の事変を裏で画策したのは矢萩さんかな」
挑発の意味である。照子にはそれが通じて、
「そんなことないでしょう。だったら、もっと羽振りがいいでしょう」
自分のコップにウィスキーをついだ。これもまだ飲み残しがあるのにつぎたした。
そこへボーイが来て、野中さんに会いたいと言って人が来たと照子に言った。
「野中? そんな人、ここにいないわ」
「俺のことだ」
「いやねえ」
俺に言うみたいに言って、
「あなたのいること、誰にも黙ってるようにと言っといたのに……」
風巻かなと思ったら、俺を呼び出したのは「四・五・六のロク」だった。オカマのロクと区別するため、このロクはこれから単に四・五・六と書く。物かげで四・五・六は俺に、顔を貸してくれとすごむ語調で、自分と一緒に某所へ行ってほしいと言って、
「ついては、ニギリ(ピストル)をちょいと拝借したいんで……」