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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
「講談倶楽部」1959(昭和34)年1月~9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,721 字 · 296 页
香屋清一とそれを取り巻く女たち。
悪い人間が一人いると、その「悪」はつぎつぎにひろがって人を毒す。いちど悪に毒された者は、容易なことではその毒から※(「二点しんにょう+官」、第3水準1-92-56)れ出ることができない。
――丸梅の女中だったおつると二人の幼ない子たち。
おつるは故郷へ帰るだろう。けれども自分の犯したあやまちや、「丸梅」に騙されたという口惜しさや、二人の子たちに対する責任の重さに、はたして耐えてゆくことができるだろうか。
豊島屋のあくどい日済し貸しで苦しんでいた人たち。あの人たちも豊島屋の手からは※(「二点しんにょう+官」、第3水準1-92-56)れた筈であるが、すぐまたべつの日済し貸しから銭を借りるだろう。そしてその、僅かな借銭に付く高利のために、同じような苦しいめにあうにちがいない。
「あたしも十二、三までは仕合せに育った」とおしのは呟いた、「店は繁昌しているし、お父つぁんはもとより、みんなから大事にされ、可愛がられて、なんの不自由も苦労もなく育った、――けれども、それはあたしがなにも知らなかったからだ、あたしがきれいに着飾って、おっ母さんといい気持に芝居や寄席へゆき、春、秋の遊山をたのしんでいたとき、お父つぁんは独りで、誰にうちあけようもない辛いおもいに苦しんでいた、財産もあり、しょ