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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
「講談倶楽部」1959(昭和34)年1月~9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,721 字 · 296 页
屋へいって来ました」
酒が来、肴が届いて、膳立てをしていると、またおしのが来て云った。
――あとはあたしがしよう、こんな時刻になったけれど、おまえには暇をあげるから、業平のうちへいって泊っておいで。
おまさは弟の家に子供が預けてあった。そのまえの年にやくざな亭主と別れ、七つになる男の子を弟に預けて、自分は下女奉公に出ていたのである。今年はまだ正月にも帰っていない、というのは、主婦のおそのが連日のように客をするため、暇をもらうことができなかったのである。
「ではお願いしますと云って、あたしはすぐに支度をし、途中で土産物を買って業平へ帰ったのです」おまさはこう云った、「ええ、ほかに人はいませんでしたから、焼け跡から出たのは旦那とおかみさんと、おしのさんの死骸でしょう、旦那やおかみさんはともかく、おしのさんは本当にお気の毒だと思います」
喜兵衛は重態だったが、どうしておそのを気の毒とは思わないのか、町方の者がそう訊くと、おまさはわけは話せないと答えた。
「仮にも奉公していた人ですから、あたしの口から詳しいことは云えません、けれど」とおまさは冷やかな調子で云った、「おかみさんがあんな死にかたをしたのは、天罰だと思います」