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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
吉川英治『剣の四君子・日本名婦伝』。同一底本的分册已合并为一书。收入:剣の四君子、剣の四君子、剣の四君子、剣の四君子、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝、日本名婦伝。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 150,635 字 · 306 页
その留守のうちの出来事である。
玉造の細川家の邸へ、石田三成からの使いが立った。――表方で、留守居の士と、その使者とが、何か応答している口上を、奥仕えの於霜は、立ち聞きして、色を失った。
「何ごとだ。……於霜どの」
大台所で会った小笠原少斎は、彼女の顔いろと慌ただしさに、呼びとめた。
忠興は、出陣の際、虫が知らせたか、老巧の将を留守にのこして行った。――小笠原少斎・稲富伊賀・河北岩見の三人であった。
「たいへんです、石田方から、奥方様を、人質にと、迎え取りに参りました」
少斎も聞いて、愕然と、
「さては、来たか」
と、つぶやいた。
あり得ることとは思っていたが、予想外に早かった。怖らく他の大名のどこよりも、真っ先に、細川家へ来たものとみえる。
在府中の諸侯の留守邸には、他家にも多くの妻子が残されている。三成は、東軍の徳川へ火ぶたを切る先に、大坂表にある大名の妻子を、自分の手に、質として収めてしまおうと計ったのである。――この策がもし完全に遂行されたら、東軍の内部には、大きな動揺が起るものと、家康も、三成の旗挙げを知ると同時に、第一に恐れた策であった。