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ちきゅうはっきょうじけん
地球発狂事件
海野 十三
「協力新聞」1945(昭和20)年9月1日~1946(昭和21)年(終号未詳)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,306 字 · 173 页
今度は気が落ちついているので、あえて望遠鏡の力を借りずとも、霊峰ヘルナー山頂の白雪を噛んで巨船が横たわっているのが、はっきりと肉眼で確められた。一体どうしたというわけだろうか、海を渡るべきはずの汽船が山を登ったというのは……。
この解答は、ドレゴの一切の智力をもってしても出てこなかった。彼はいまいましくてならなかった。でも、かかる奇怪極まる謎を即座に解き得る者は、この世の中に誰一人としていないであろうと思い、彼は自己嫌悪の気持を稍取戻した。
「答える術のない怪事件だ。だがその事実だけは誰の目にも正しくうつっているのだ。そうだ、もっと多く観察しなければならない、これから直ぐ、ヘルナー山へ登ってみることだ」
ドレゴはガロ爺やを呼んだ。そして急いで二日分の糧食と飲物の用意を命じた。何もしらないガロは愕いて、
「若旦那さま、どこかへお出ましでございますか。一体いずれへ……」
と尋ねたが、ドレゴはそれには応えず、命じたものを急いでここへ持って来るように命じた。それはサンドウィッチ、ビスケット、チーズ、塩肉、野菜スープの缶詰、それから数種の飲物だった。ガロはいいつけられたものを地下物置から取出すと、大きな盆の上に山盛にして、ドレゴの部屋へ持って来た。