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ちきゅうはっきょうじけん

地球発狂事件

海野 十三

「協力新聞」1945(昭和20)年9月1日~1946(昭和21)年(終号未詳)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,306 字 · 173 页

青空文庫

こっちが爆撃せられちゃたまらんから、わしは全船室に点灯を命ずると共に、探照灯のスイッチを入れて、飛行機の音のする方を照射させた」

「ほう。見えましたか」

「見えたね、銀翼がきらりと光った。飛鳥の群が空へ飛上ったかと思われるような光景だった。四、五十機は見えたがね、それが大体五百メートルぐらいにつっこんで来て、何かをぽいと放り出すんだ。と、落下傘が開いて、そのものがふわふわと暖かい海面へ落ちて行く。何だろう、あれは……。食糧投下かな、それとも機雷投下か。わしたちは船橋に固まって、今にも爆発音が起るかと耳と目とに全神経を集中していたが、一向爆発の起る様子もない。ふしぎだわいと首をひねっていると、大きな声がして無電局長がとびこんで来た。“船長、空中からの命令の無電です。すぐ探照灯を消せといって来ました。これが命令です”。わしは受信紙をとって読んだ。絶対の命令だ。違反すれば、軍行動の妨害者と見なすと注意がしてあった。わしは愕いて、すぐさま探照灯を消させた。わしが見たのはそれだけだ。その後も頭上ではいつまでも飛行機の音がひっきりなしにぶんぶんいっていたがね」

船長の顔が夕闇の中に溶けこんで、その表情が見えなくなった。