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ちきゅうはっきょうじけん

地球発狂事件

海野 十三

「協力新聞」1945(昭和20)年9月1日~1946(昭和21)年(終号未詳)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,306 字 · 173 页

青空文庫

「……五千五百……五千四百……」

やがて再び艦が城塞までの距離を五キロに縮めたとき、又しても正面から外力によって突き戻された。

が、やっぱり同じ順序によって、艦はなお安全であり、航路を恢復した。

こんなことが前後に三時間に亙って六回も繰返えされた。だがウラル号とその乗組員は、すこしもひるむ色を見せず、執拗に城塞への肉迫をくりかえした。

「この次起ったら七回目だぜ。少々こたえるね」

ドレゴが遂に弱音をちょっぴり吐いた。

「われわれはピストンにつかまっているんだと思ってりゃ、大したことはないやね」

水戸が痩せ我慢を見せた。エミリーが二人のうしろから、火酒の壜を差出した。

「ありがとう。エミリー。君は気持は何ともないのかね」

そういいながらドレゴは壜から喇叭呑みをやった。

「あなたたち二人が気絶した後で、あたしはゆっくり目をまわすつもりよ」

「女は気が強いね。無理もない。大事な、殿御を先ずもって介抱する義務があるからね。おい水戸。エミリーの言葉を聞いていたかい」

「聞えたようだがね」

「僕も恋人を一緒に連れてくればよかった」

「有りもしないのに、仰有るわねえ」

エミリーがまぜかえした。