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ちきゅうはっきょうじけん

地球発狂事件

海野 十三

「協力新聞」1945(昭和20)年9月1日~1946(昭和21)年(終号未詳)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,306 字 · 173 页

青空文庫

「うん、すばらしい名称を考え出すよ」

ドレゴは、すっかり機嫌を直して、燃える巨船の船尾の方へ駆け出して行った。

煙が、意地悪く船尾の方へなびいているので、そこについているはずの船名は、そのままで読みとれなかった。これには困ってしまった。

が、彼はこのままで引下がることは出来なかった。何かよい工夫はないかと、頭脳を絞ってみたが、不図思付いて、彼はすこし後退すると雪塊を掘っては岩陰へ搬んだ。そしてかなり溜った上で、今度はそれを掴んで矢つぎ早に船尾を蔽う煙に向って投げつけた。

これは思い懸けなくいい方法だった。煙はこの雪礫に遭って、動揺を始め、或る箇所では薄れた。それに力を得て、ドレゴは更にその方法をつづけ、そして遂に朧なる船名を判定することに成功したのであった。

ゼムリヤ号。

これがこの怪しき巨船の名であった。一体どこの国の船であろうか。それを知りたいと思って、なおもしばらく雪礫で煙を払ってみたが、それは成功しなかった。船腹には国籍の文字もなく、船旗も信号旗も悉く焼け落ちていたからである。

それからこの事件の名称だ。

ドレゴは、水戸の待っている場所まで戻る間に、この事件のためにすばらしい名称を思付くことを祈念した。