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ちきゅうはっきょうじけん

地球発狂事件

海野 十三

「協力新聞」1945(昭和20)年9月1日~1946(昭和21)年(終号未詳)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,306 字 · 173 页

青空文庫

が、この三人が重要問題としている点は、一般にはさほど重視されていなかった。新聞や放送におけるこの事件の報道の焦点は、やはり、如何なる怪力がゼムリヤ号を高い山頂へ搬んだか、ということにあった。それは興味の点からいっても当然であろう。

この事件が発見された当時は各紙とも、この問題の解決に殆ど無能力に見えた。なにしろ一万数千トンもある巨船が、海抜五千米のヘルナー山頂へ引掛っていることをどう説明したらいいか、途方にくれたのは当り前であった。その点において、事件発見者のハリ・ドレゴが、“巨船ゼムリヤ号の発狂事件”と題名をつけたことは、寧ろ彼の頭脳のよさを証明していたものといっていいのだ。そうだ、ゼムリヤ号は発狂でもしなければ、そのような狂態を示し得ないであろう。

しかし、ドレゴの選んだこの事件の題名も、そばに居合わせた水戸宗一の意見によって改訂され“地球発狂事件”として報道されたのであるが、この一層奇抜な題名は、今も尚この事件の題名として全世界に公認され、使用され、そして愛用されているのだといって誰もが本気になって“地球が発狂した”とは考えているわけでない。