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ちきゅうはっきょうじけん

地球発狂事件

海野 十三

「協力新聞」1945(昭和20)年9月1日~1946(昭和21)年(終号未詳)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,306 字 · 173 页

青空文庫

鍵は大西洋に

そして人々は、果してそうかどうかを一日も早く確かめたかった。

このことについて更に一層人々の関心を高めたものは、世界における原子エネルギー学の権威として知られているワーナー博士の発言であった。博士は研究室において意見を発表して曰く、

「ゼムリヤ号を高山頂きにおいて座礁せしめることは、原子エネルギーによるに非ざれば不可能である」

と述べたのであった。

鍵は大西洋に

二つの台風の中心が双方から近づいて一つに合体し、更に一層猛烈な新台風を作ったかのように本事件は大沸騰を始めたのであった。そして、第二の原子爆弾製造国が現実に現われたかのように思い込んでしまう人々が多くなったばかりか、その製造工業に成功した某国とは一体何処なりやという点について熱心な論議が行われるようになった。

だがこの論議は、その影響するところの重大性に鑑み、明らかなる国名は新聞や放送には発表されなかった。つまり遠慮されたのである。

しかるに別途、一つの疑惑に火がつけられた。それは、ゼムリヤ号がソ連船であり、そして驚異の性能を持った新鋭砕氷船であり、その行動も事件発生の三週間前から杳として謎に包まれているのにも拘らず、ソ連側からは一向何らの弁明すら発表されていないのはどうした訳かというのであった。