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ちきゅうはっきょうじけん

地球発狂事件

海野 十三

「協力新聞」1945(昭和20)年9月1日~1946(昭和21)年(終号未詳)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,306 字 · 173 页

青空文庫

「僕はてっきりそうだと思っていたがね。だから僕は前にホーテンスにそのことをいいかけて、周章てて口を噤んだのだ。彼を無用に刺激したくはなかったのでね」

ドレゴがいった。水戸は黙って肯いた。

「おや、君は何か別の意見を抱いているのかね」

ドレゴが、水戸の硬い面を凝視した。

「いや、僕は始めからあの国を疑ぐりはしなかった。しかしあの国は何故“ゼムリヤ号は当時賑かな大西洋を航行中だったんだから、そのような嫌疑は無用である”という謂い方で釈明しなかったんだろうか。この事実を投げ出せば、釈明は一言でもって明瞭に片附くではないか、それをしないであのような謂い方の釈明を採用したのは一体どういう訳だろうかね」

そういって水戸記者は、静かにドレゴの面を見詰めた。ドレゴはくすりと笑って、顔を右へ振った。

「おお、可愛想な東洋の哲学者よ、何故君はそんなに懐疑を恋人として楽しむのかね」

それを聞いて水戸ははっと顔を硬くした。が、すぐさま元の何気ない表情に戻って、

「これは哲学ではない、事件真相の探究だ。悪くいっても推理遊戯の程度さ」

水戸は軽く笑って、冷たいコーヒーを飲み干した。