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ちきゅうはっきょうじけん

地球発狂事件

海野 十三

「協力新聞」1945(昭和20)年9月1日~1946(昭和21)年(終号未詳)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,306 字 · 173 页

青空文庫

博士の非常警報が出たときに限り、全員は応急浮揚器の紐を引いて、海底に浮かびあがる手筈になっていた。それ以外は、どんなに不安に怯えるとも、博士を信頼して頑張ることになっていた。

ホーテンスも水戸も、列の最後尾に並んで共に元気だった。

「おい水戸君。昨日D十五号だけがあのとおりひどくやられて他の艦船が大した損害を受けなかったことを君は不思議に思わんかね」

ホーテンスは、闘志満々たるところを示して、この期になお同業者と討論を持ちかける。

「不思議は不思議さ。およそ何もかも不思議なんだ。だがその不思議と映る現象――その事件そのものを素直に受取るより外ないね」

「ははは。そこで君の持説“地球発狂事件”かね」

「そうなんだ。それはとにかくD十五号事件によって、あの驚異の力には方向性があるといえると思うんだ」

「方向性だって」

「そうだ。方向性があればこそ、D十五号だけがあのような大破壊を受け附近にいた水上艦艇も水中にいた潜水艦も共に惨害から免れたのだと思う。だからわれわれが水中であの種の驚異力の発生を感付いたら、すぐに物蔭に寝るといいと思うね。水中では波動速度がのろいから、きっとそれでも間に合うと思うよ」