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ちきゅうはっきょうじけん
地球発狂事件
海野 十三
「協力新聞」1945(昭和20)年9月1日~1946(昭和21)年(終号未詳)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,306 字 · 173 页
商人ケノフスキー
商人ケノフスキー
「あっ、エミリー……」
浴槽の中で、裸のドレゴは硬くなって叫んだ。傍に立っていたガロ爺やは、電気に懸ったようにその場にとびあがり、浴室の入口へ走った。
「こ、困りますね。広間でお待ち願うよう申上げたつもりでございますに……」
「一秒を争うことなんです。ドレゴさんにすぐお目にかからねばなりません」
牝牛のように身体の大きなエミリーは戸口に立ちはだかる枯木のようなガロ爺やをぐんぐん押し戻して、浴槽の傍まで入ってきた。
「エミリー。お願いだからあと二分間、部屋の外で待っていておくれ」と、さすがの心臓男ドレゴも、エミリーの剣幕におそれをなして、赤ん坊のように悲鳴をあげた。
「ところがたいへんなのよ。ケノフスキーが飛行機で行っちまうんです」
「ケノフスキー?」
「そうなの。うちに下宿しているケノフスキーです。ゼムリヤ号に関しては、あの人が一番謎を知っているんです。そしてそれに関する取引も、あの人だけが握っているんです」
ドレゴは浴槽の中で、石鹸の泡をかきたてることも忘れて、「へえっ」とおどろいてしまった。ケノフスキーが水戸と同じくサンノム老人の下宿にいることは勿論知っていた。