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ちきゅうはっきょうじけん

地球発狂事件

海野 十三

「協力新聞」1945(昭和20)年9月1日~1946(昭和21)年(終号未詳)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,306 字 · 173 页

青空文庫

海底にわだかまるもの

との信号があった。

何事かと、左隊の三名が潜水兜をくっつけ合って意見交換を始めたとき、右隊から誰かが近寄ってきた。

「おお、ホーテンス」

水戸は彼を認めて、名を呼んだ。そのホーテンスは途中急いだと見え、聞きながら水中電話機から声を出した。

「大警戒を要するのだ。前方百メートルのところに、海底からとび出したものがある」

「海底からとび出したもの?」

「そうだ。その正体はまだ分からぬ。沈没している船かもしれない。或いは岩かもしれない。とにかくこれから油断をしないで前進するように、との博士の注意だ」

海底にわだかまるもの

ホーテンスが右隊のほうへ帰ってしまうと、左隊の三名は、前よりも一層互いに身体を寄り合って、そろそろと軟泥の上を前進していった。

(沈没船か、岩か?)

岩なら別に問題はない筈。博士が警告したわけは、それが沈没船の如き異様な物体だと判定したからであろう。

すると沈没船が、あの異常振動を出すのであろうか。

とにかく振動源の方向に、その沈没船らしいものが横たわっているので、博士は警戒を命じたものに相違ない。すると、そこまで行きつけば、その正体も、振動源の謎も解けるかもしれないのだ、いや、ひょっとしたら怪奇を極めたゼムリヤ号座礁事件の真相さえが、快刀乱麻を断つの態で解け去るかもしれないのだ。