轻松读懂日语经典作品
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ようちゅう
妖虫
江戸川 乱歩
「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页
不意を打たれた両人は、小男の烈しい気勢に押されて、思わず両手を挙げてしまった。
「ハハハ……、神妙に手を挙げなすったね。ところで、俺を誰だと思うね。分るかね。そこな三笠龍介さん。どうだね。この声に聞き覚えはないかね」
小男の声音は突如として全く違った調子を帯びて来た。
「アッ、貴様、あの老いぼれ探偵だな」
「イヤ感心感心、わしの声を覚えていたと見える。如何にもわしはその老いぼれ探偵だよ。ホーラ見るがいい。どうだい。本物の方が、そこな偽物よりも、ちっとばかしいい男だろうが」
小男は背広の襟をくつろげ、鳥打帽子とスカーフをかなぐり捨てた。その下から現われたのは、読者も大方推察されていた通り、名探偵三笠龍介氏の白髪頭と白髯とであった。
実に異様な光景であった。そこには、おぼろげな電燈の光の中に、白髪、白髯、ロイド眼鏡、寸分違わぬ二人の三笠龍介が、一間とは隔たぬ距離で向き合っていた。縞柄こそ違え色合は殆ど同じ背広服、偽探偵も、頑丈作りの壮年ではあったけれど、背は並より小さい方だから、二人がヒョイと入れ替って位置を換えたら、もうどちらがどちらだか、見分けがつかぬ程であった。