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ようちゅう

妖虫

江戸川 乱歩

「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页

青空文庫

動く岩

自慢がしたい年ではない。本当の目的はもっと外にあったのさ。わしはお前達を話で釣って、待っていたのだよ。ホラ、うしろをごらん。そこへ来た人達を待っていたのだよ」

これには流石の青眼鏡もギョッとして、云われた通りうしろを振向かないではいられなかった。偽探偵も同様、二人は首を揃えて背後の竹藪を振返った。

動く岩

すると、アア、これはどうだ。彼等が振返るのを合図の様に、竹藪がザワザワと鳴って、掻き分けられた竹の葉の間から、人間の顔が一つ二つ三つ四つ……合計五人。その中の一人は真先に藪を飛び出すと、いきなり倒れている珠子の側へ駈け寄って、抱き起しざま、正気づける様に、その名を呼び続けるのであった。彼女の兄の相川守青年だ。彼が老探偵と一緒に悪漢の服を着て、運転手と化ていたことは、読者も既に気づかれた通りである。

竹藪から現われたあとの四人は、云うまでもなく、守青年が急を知らせて同行した警察署の人々だ。私服が二人、制服が二人、いずれも捕物に年期を入れた、老練の警官達である。

「ヤア、警官方、待ち兼ねました。早くこの二人を押えて下さい。ピストルを持つ手がしびれ相ですわい」