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ようちゅう

妖虫

江戸川 乱歩

「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页

青空文庫

じゃありませんか。それなら僕も少しかかり合いの者なんだが」

「エエ、実は、三笠先生もそうおっしゃるのでございます」

彼女は「赤い蠍」という言葉に、サッと顔色を変えて、さも恐ろしそうに身をすくめた。

そうして彼等が、隅の方でボソボソと囁き合っていた時、突然、ゾッとする様な恐ろしい叫び声が聞えた。叫び声というよりは、寧ろ野獣の咆哮であった。

「アラ、いけませんわ、そんなに御動きなすっては」

看護婦がベッドへ飛んで行って、もがく病人を押鎮めようとしたが、瀕死の老探偵は、まるで気違いの様に身もだえをして、苦しさに耐えぬものの如く、わめき続けるのだ。一匹の痩せさらぼうた狂犬の様に、吠えつづけるのだ。

アア、その形相のすさまじさ。額には静脈がムクムクとふくれ上って、昂奮の余り顔色は紫に変じ、両眼は飛び出すばかり見開かれ、口は真夏の日中の犬の様にだらしなく開いて、涎をたらしながら、悲鳴とも怒号ともつかぬ、一種異様の唸り声がほとばしる。そして、身もだえをする度に、骨ばかりの様に痩せた両手の指が、断末魔の形で空を掴むのだ。

「君、ここは僕がいるから、早く院長を呼んで来てくれ給え」