轻松读懂日语经典作品
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ようちゅう
妖虫
江戸川 乱歩
「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页
その男には、女が部屋の真中へ出て来なければ見えないというのも、実に異様である。
(アッ、若しかしたらあの中にいるんじゃないかしら)
襖の隣に、何かの自然木の床柱と、壁の落ちた床の間の一部分とが見えているのだが、その床の間に、大型の支那鞄程もある頑丈な木箱が置いてあって、その三分一ばかりが視線の中に入っている。若しやあの木箱の、ここからは見えない部分に穴があけてあって、山印という奴は、そこから覗いているのではあるまいか。歌声は丁度その方角から聞えて来るのだ。
(イヤ、俺はどうかしているぞ。いくらなんでも、あんな窮屈な木箱の中に人間が入っているなんて、あんまり馬鹿馬鹿しい想像だ)
相川青年は、彼の突飛な空想を自ら打消したが、あとになって分った所によると、彼は決して間違ってはいなかったのだ。その木箱の中には、やっぱり人間が入っていたに相違ないのだ。だが、それは一体全体何の必要があってであろう。
「サア、愈々日頃の恨みをはらす時が来た。姉さん、俺達の恨みが、どんなに深いものか、今見せてやるよ」
最初襖に横顔を映していた奴の声だ。
次の瞬間、何かしらサッと、稲妻の様なものが閃いたかと思うと、横わっていた肉塊が、非常な勢で飛上った。